共通項とマジックと。

新卒から7年務めていた会社を辞め、裸一貫で独立起業するときの出来事でした。
安定した収入を得られる見込みもなく、それなりに多い奨学金もまだ
完済までは程遠く、おまけに退職の原因の一部に心身の不調と来たもんで、
絶対に、だれかとお付き合いすることなんて無理だと思っていました。
何があっても独りで生きていく覚悟もできていて、
別に彼女がいなくたって、楽しく生きていけると思っていました。

私は、あるボランティア団体に参加しており、あるとき、そういった団体の
ミーティングに参加することに決まりました。
そこで、少し年上の女性と知り合いました。
優しそうな方だと思いましたが、特に意識はせず、その場は少し会話して、
地元が好きな人同士熱くお話ができそうだ、と思いながら、その場を後にしました。

それから、ややしばらくたち、私は独立開業のためのセミナーを受講しました。
すると、その会場には、ミーティングでお会いした方もいらっしゃいました。
「あのときは、どうも。受講されていたんですね。」
など当たり障りのない会話をしつつも、自分と年代が近い方が、
同じように創業を目指しているということが少しうれしくなりました。

もっとお話をしようと思ったのは、最初は、異性としてではなく、
私が前職で転勤を繰り返していただけに、ずっとこの街にいた方から
この街の人の気質であったり、教科書に載らないような歴史であったり、
そういった「活きた情報」を教えてもらいたいと思ったからでした。
こうした情報は、きっと自分のこれからの商売の役に立つと思ったからです。

お話していくうちに、地元に対する想いというところでは、
やはり最初の印象通り、意気投合できました。
フェイスブックのアカウントも交換し、これである程度表面上の
やりとりができるようになりました。

とはいえ、実際にお会いしてお話を伺うということについては、
同年代の異性ということもあり、かなり気を使いました。
どのような点に気をつけたかというと、あくまでも地元のことを
教えてほしいという姿勢を崩さなかった、この一点です。

そうして、何度かお会いして、ご飯に行ったりドライブしたりはしていましたが、
恋愛事情についてのお話になったのは、ドライブでのことでした。
私自身のいきさつから、だれとも付き合うつもりがないこと、
とはいえ、世の中のいわゆるカップルってどんなものなのかという思いはあること、
そして、この街での恋愛、結婚事情について、話が及びました。
結局、お互い、だれとも付き合うつもりがないというところで落ち着きました。
それぞれ見ていたのが、自分を看板にした独立開業だったわけですから。

クリスマスごろ、その方は病気で入院していました。
たまたま、その方のゆかりの地の写真集が発売になったので、
お見舞いがてら、その写真集を渡しに行きました。
その時も、まだ、お互いがそれぞれ見ている将来の夢の話で終わりました。

年明けが近づくにつれ、その方も退院し、二人はいよいよ起業の準備に
取り掛かりました。創業の地も、奇しくもご近所だったこともあり、
私の借りているテナントを、その方の事業の準備室として、
お互いに可能な範囲で協力し合おう、ということになりました。

年が明け、私の開業が目前に迫りました。
私は開業準備のラストスパート、その方は1か月後の開業に向けて、
その日も、時折他愛のない会話を交えながら、お互い別々の作業をしていました。
ただひとつ違ったことは、作業中にかけていたラジオからは、
やたらと恋や愛について歌ったものが多かったということでした。

その日の業務終了後から、二人は付き合うことになりました。

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